Column
#001: 様々な釣りがある
●特殊な国・日本
image photo  四方を海に囲まれ、多くの山河を湛えた日本は移り変わる四季まで加わりとても美しい国土を保有しています。そんな国土に恵まれた日本人には平安の昔から知識人階級の間で花鳥風月≠愛でる風習が身につき、庶民階級の間では旬≠楽しむ特権を得る事ができました。
 日本では旬は釣りの世界で最も重要な基準となり、四季折々の釣りを楽しむという、諸外国では例を見ない贅沢な文化が発展してきました。加えて地形や気候が地域ごとで違うことを理由に各地で独自の釣法が編み出され、これまた世界に類を見ない狭い国土の中で数え切れないほどの釣法が存在するようになりました。
 これほどまで釣りが発展しバリエーションに富んだ国というのはほかに例がない。
 当然昔は獲って食うための釣りしかなかったのですが、仲間が集まって釣果や技を競うようになるのはごく自然な話です。加えてサカナの引きの強さに魅せられ、釣りのプロセスそのものを楽しむ人が出てきても当然です。そこで食って旨くないがやたらと引きが強いへらぶなを対象魚とした釣技を競うだけがための釣り∞釣り事を楽しむ釣り≠ェ発達しました。今で言うゲームフィッシング≠フ誕生です。
 そして20世紀・第2次大戦後になると海外からルアーフィッシング・フライフィッシング等の釣りが普及し、さらに広がりを見せるようになりました。これらの海外から届けられた釣りは少なからず竿や釣法などに影響を与えているようです。そして現在、多種多様な釣りがある中で釣りをする人の捉え方も多種多様になっています。
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●とても寛容な釣りのスタイル
image photo  昨今のアウトドアブームの影響で仲間とワイワイ出かけてキャンプやバーベキューのついでに糸を垂れるのも釣りです。また複雑な人間関係に嫌気が差し、都会の喧騒から離れるために竿を振るも釣りであります。また子供の情操教育にと家族で楽しんだり彼女を行楽地に誘い出すデートの手段にする釣りもある反面、都会の喧騒を離れ孤独を楽しむ釣りもあります。
 ひたすら大物だけを狙う釣りもあれば掌に何枚の釣果を乗せられるかを競う釣りもあり、釣果を美味しく頂くための釣りもあれば釣りそのものを楽しむ釣りもあります。同じ釣りといっても今や様々なスタイルがあり、様々な考え方があります。
 これだけ幅広く奥深いスタイルを保有している遊びは他に類を見ません。日本のみならず世界で愛され育まれ、長い年月を費やして培われてきた結果、これだけの深遠で幅広いスタイルが確立されたと言って過言ではないでしょう。
 もちろんある程度向き不向きがあります。しかしエサが触れない人でもルアーやフライがあり、サビキ釣りやウィリーのような疑似餌釣りがあり、まっとうな人間であればまず様々なスタイルの釣りのどれかに合致するものです。最近多いのは「サカナが触れない」という軟弱者ですが、一度サカナを釣らせてみれば簡単に克服できるものです。
 これだけ寛容で楽しい遊びをやらない、知らない人は実に悲劇的で哀れですね。
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●とても了見の狭い個人のスタイル
image photo  特に釣りバカ・釣りキチとなると家族や恋人を連れて行っても釣りにばかり専念してしまい相手はそっちのけ、挙句の果てには「つまらない」と文句を言われ釣りに行く事も釣りをすることも文句を言われるようになってしまう…良くある話です。また同じ対象魚で同じジャンルの釣りをしているにもかかわらず話が合わずにいざこざになる、果てには口論や取っ組み合いのケンカに発展してしまう…「そんな奴おらへんやろう」と大木こだま師匠張りのツッコミを入れたくなるところだが、本当に良くある話です。
 一番最悪な事は自分が釣れてもムスッとしている、連れの彼女が釣れて喜んでもムスッとしている…これまた「こだま師匠、突っ込みお願いします」と言いたいところですが特のバスフィッシングをやっている連中に多いですね。
 どちらの例も余りにも釣りの世界が奥深く、余りに多くのスタイルがあることが災いしてしまっているようです。スタイルが多いにもかかわらず一人ひとりは余りにも狭いスタイルで楽しんでいるので合致する人は少なくなってしまいます。どこをどう突いても小さい人間のセコイ人間自慢選手権≠ナしかない多くのスタイルの一部しか経験していない事が原因ですが、古くから培われてきた釣りの歴史を考えるとひとつのスタイルしか知らないとはもったいない話です。
 自分の世界を突き詰めるのも釣りであれば、自分の哲学も釣りのスタイルではあります。しかし主義主張や自分の価値観を他人に押し付けるのは傲慢な思い上がり以外の何物でもありません。みんなで楽しむのも釣りであり、互いの違いを知るのも釣りなのです。なぜなら釣りは人生の一部なのですから。
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