Column
#020:人類最古の友 犬 が教えてくれる事

● 人類最古の友は色々な事を教えてくれる…今回のコラムは犬だらけです
image photo  それは文明以前の話…
 狩猟を生業としていた原始人類が火を焚き獲物の肉を焼いていた。その匂いは森に届き、気がつくと1尾のオオカミがにじり寄ってきた。まるで攻撃してくる気配のないオオカミに人間は試しに焼いている肉を切り取り差し出してみた。最初こそ警戒してたじろいでいたオオカミだったが、やがて人間が差し出した肉を口にした…人間と犬との関係はそれこそ有史以前の原始時代に遡りますが、時にこの関係から犬の事を『人類最古の友』と表現する事もしばしばあります。
 蛇足ながら犬と対比される猫は古代エジプト文明では〝神の化身〟として神聖視されていました。江戸時代には日本でも〝招き猫〟に見られるような〝福を呼ぶ神〟とか〝化け猫〟のような〝怨念を持つ生き物〟として捉えられていました。つまり猫は時代が変わるにつれ徐々にペットとして降格したのに対し犬はずっとペットとしての確固たる地位を保ってきた、というわけです。
 それは猫が単独で生活するのに対して犬は群れを成して行動する習性に基づくもので、飼い主である人間を〝ボス〟と認識する能力のある犬の基本的な習性によるところが大きいのです。
 
 そんなどこまでも人間に忠実な犬ですが、残念ながら私は犬を飼った事がありません。興味がないのかといえば、興味どころか犬を飼いたい欲望は半端ではなく条件さえ揃えば今すぐにでも買ってしまいそうな勢いです。では何故飼わないの?ですが、どうした事か私自身は犬が大好きなんですが死んだ親父が犬嫌い(怖いらしい)。我が家で一番反対していた親父がもう死んだのだから買ってしまおうか、とも思ったのだが犬が怖いというDNAはしっかり姉と弟に受け継がれ、困ったDNAは甥にもしっかり受け継がれてしまった…「犬なんか飼われたらうかうか線香あげにも行けない」といまだに反対されている。マジかよ、ですが私のDNAはしっかり犬を必要としているんだけどなぁ。

 というわけで今回は人類最古の友・犬についてです。

 個人的な話をすると栗毛の日本犬をとっても飼いたくて仕方がない。などと言うと「あ~、柴はかわいいからねぇ」と勝手に柴犬と決め付けて話を進めたがる奴が多いこと…当然柴が欲しいわけではないので私は黙りこくってしまうのにそれでもお構いなしに柴犬について熱く語られた日にはそいつのデリカシーというものを疑ってしまう。
 ひと口に日本犬と言ってもいろいろいるんですよね…そこで洋犬好きの皆さんには申し訳ありませんが、今回は日本犬に限定して話が進みます。実は日本犬を調べていくと人間よりも明確に色々な事が見えてくるのです。
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● 柴犬よりも日本的な犬とは
image photo  日本犬と言って真っ先に思いつく犬は何といっても柴犬ですね。
 犬種としての分類で言えばワーキング・グループ(作業犬)の中型犬で、日本最古の犬種とも考えられ紀元前3000年頃に誕生したと考えられている。古代遺跡から出土した埴輪や銅鐸に描かれた紋様などから天然記念物柴犬保存会などでは主張しています。
 しかし柴犬は厳密に調べてみると縄文犬と弥生犬とが交配してできた種で、大昔のオリジナルはいわゆる雑種だったわけです。このあたりは諸説ありますが、柴犬のDNAには中国のチャウチャウ等と同じDNAを持ち合わせている事から紀元前3000年頃に柴犬はいなかったというのが一般的な学術的見解です。
 柴犬が日本で最も良く知られた愛くるしい顔立ちと愛嬌のある仕草が人気のある犬種であることは間違いありませんが、弥生時代に大挙して西日本に上陸した渡来人が連れてきた弥生犬(食用犬だった!)との交配でできた事も紛れのない事実です。実は日本犬のオリジナルは別の犬種にあります。
 いってみれば柴犬のもう一方のご先祖様ということになりますが、弥生犬に対する縄文犬というものはどのような犬なのでしょう…
 
image photo  長い日本の歴史の中で純血の縄文犬というものは存在しなくなってしまいましたが、その中でも特に縄文犬の血を濃く残しているのが沖縄の琉球犬です。
 南方系の犬らしい短めの毛並が野生のオオカミを彷彿とさせますが、こう見た限りではこのような犬がチャウチャウ(ばかりではないですが)と交配して柴犬ができました、と言われると妙に納得できるのは私だけではないはず。そしてこのような縄文犬は南方から北上して日本全土に定着したことを証明するかのように各地に〝ご当地犬〟が存在します…ブルドッグなどと掛け合わせた闘犬の土佐犬、土着犬を品種固定した紀州犬甲斐犬(パッと見は毛の伸びた琉球犬)、シェパードなどと掛け合わせた秋田犬(忠犬ハチ公は秋田犬)などはこの縄文権の末裔、と考えられています(全て国の天然記念物)。
 と、ここまでお話すると前回までのコラムを読んで来た方ならピンと来るはず…人間(日本人)とそっくりな足跡を残しているじゃないの、と。そんなひらめきにトドメを刺すような犬がいるのです。


● 物言わぬ生き証人
 学術的な正式名称を北海道犬という犬種がそれです。イギリスの動物学者 T.W.ブラキストン によって命名された〝アイヌ犬〟で有名ですが、このサイト上ではアイヌ語でセタ(またはシタ=犬)と表記します。
 北の大地で生き抜くために毛並こそ長くなりましたが、それ以外は琉球犬ととても近い犬種で、やはり縄文犬の血を濃く残しているといわれています。縄文時代末期から弥生時代に東北のマタギ犬が人と共に移住し、定着したものと言われています。言い換えればアイヌといわれる人達は東北にいた、他の犬種から考えても渡来人が来るまで日本はアイヌの土地だった、年代から考えるとアイヌは縄文人の末裔だった、ということを示すひとつの証拠になるのです。そして北の大地に生息する南方系犬種という矛盾も、日本人がはるか南方からやってきた事を示しています。
 有史以前からの人類最古の友である犬が日本人のルーツを指しているというのは非常に興味深い。そして海を隔てた北海道と沖縄に渡来人の影響をほぼ被らなかった犬種が残ったのも頷けます。
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 日本人の多くは柴犬が好き、というのも面白い。もちろん紀州犬や土佐犬のようなコアなファン層がいる犬もいますが、統計的に見るとやはり柴犬(豆柴を含む)が一番人気だそうです。これは縄文人と渡来人のハイブリッドである大多数の日本人のDNAと共鳴するところが多いからではないか、と推測するのは邪推と言い切ることができるでしょうか。
 さらに面白い事に、どんなに教育機関で「日本人は古来より農耕民族で…」と言われても日本犬の特徴とである〝狩猟犬として山野を駆け巡ってきた〟という概念と思い切り矛盾していてアヤシイものです。犬を見るだけでも縄文人即席が垣間見えますが、教育機関は一体なぜそんな矛盾だらけの事を苦しい言い訳だけで押し通そうとしているのか甚だ疑問です。
 そんな日本犬も種類が多く比較的懐きやすく飼いやすい洋犬人気に押されて甲斐犬等の極端に生息数を減らしている犬種や津軽犬や越後柴・薩摩犬などの絶滅してしまった犬種も多いのが実情です。これも時代の流れといえばそれまでですが、日本人の足跡を語ってくれている生き証人が絶滅してしまうのはなんとも切ない限りです。
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● 追記…ウラ漁師が憧れる犬と釣りの共存
image photo  日本人が太古の昔から犬を友として付き合ってきた事は迷うことのない事実ですが、太平洋戦争中の食糧不足から無駄飯を食う犬を飼う事は〝非国民〟とされた悲しい時代もあったそうです。かわいそうという見方もありますが、自分たちのルーツである文化に欠かせない犬を否定するとは、実は自分自信を否定しているのと同じで、そんな連中が戦争に勝てるわけがありませんよね。
 さてそんなくだらない時代の話はともかく、私個人的な話をしますと飼いたい犬というのが茶毛(赤毛)のセタでして…というのもセタはマタギ犬の末裔で100%狩猟犬なんです。それに主人への忠誠心は半端でなく大きな鹿でも熊でも果敢に攻撃する勇気と、仕留めても主人が取りにくるまで獲物の傍らで待っている、というのです。元々パッと見ただけでいっぺんで気に入ってしまった犬種なのですが、調べれば調べるほど気に入ってしまうのです。
 もちろんそんな忠実な犬に育てるにはそれなりに躾や調教といったものが必要で、今日買ってきて明日には、というわけにはいきません。躾を失敗するとやたら警戒心が強く吠え捲くるバカ犬になってしまうそうです。
 
 1日掛けて釣りあがる渓流でのフライ・フィッシングや湖でのフライフィッシングなんかでは犬を連れて釣りをしたいなぁ、というのがウラ漁師が憧れるフィッシング・スタイルです。仔犬の頃からクルマと水に慣れさせておけば充分可能で、特に日本犬の場合多くの人間に触れさせて人馴れさせれば無駄吠えや噛み癖というものはなくなるそうです。うらたん井上さん、セタは人馴れさせないとダメだったんですよ。
 もちろん釣りに連れて行くのは不意にイノシシや熊に出くわしても追い払ってくれる、うまくいけば仕留めてくれるという副産物もありますが、やはりこれは自分の日本人としてのルーツを求めるDNAの欲求なのか、はたまた縄文人末裔率70%以上の血がそれを求めているのか(あなたはどっち?〝あなたの釣りの適正は?Hunter Check〟で調べてね)、犬と一緒に川を釣りあがるのがウラ漁師の夢なのです。これがフライ・フィッシングやトラウト・フィッシングだから絵になる話で、どうした事かバス・フィッシングやシーバスなんかではサマにならないんですよね。やはりカントリー・ジェントルマンに犬は不可欠で、片手にフライ・ロッドを持って傍らに犬を連れて森を歩いて家路に着く、というスタイルがウラ漁師の最終目標なのです。フライフィッシングと犬は良く合うなぁ…時間が過ぎるにつれ犬を飼いたいという欲望は大きくなるばかりです。
 どうせ飼うなら洋犬よりセタがいいのです。セタにはそれなりに遊べるスペースが必要で、現実我が家には狭いながらもセタを遊ばせるのに充分な庭があります。条件は揃っているはずなのですが冒頭でも述べた通り「犬がいたらおちおち線香もあげに行けない!」と大反対する姉弟のおかげでなかなか実現できません。
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アウトドア&フィッシング ナチュラム

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